生前の君に捧ぐ、最初で最後の物語
「貴方は馬鹿な方ですわ」
「よく言われます。でもこれが性分なのです。
無理をしてでも約束だけは守り通したい頑固な男なもので」

沈黙を破ったのは佐久子。私はその言葉に苦笑して、簡単に返すことしか出来なかった。

「貴方が眠っている間、読ませていただきました。
全てを読んだわけではありませんが面白いじゃないですか。
失礼ながら貴方の存在を忘れて読みふけってしまうところでしたわ。
何故、死のうと思われたのかが、わらわには分かりません。
死なないでもっと沢山のお話を書いてくださいませんか。わらわの為ではなく。貴方や他の方々の為に」

思わぬ言葉が返って来て、今度は私が泣きそうになる。
こんなにも書いて良かったと思うことはない。
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