身勝手な恋情【完結】
耳を疑った。
いや、これがまず「現実」かどうかを疑った。
「あの……今、なんて?」
「お前――耳まで悪いの?」
にっこりと、毒々しく微笑む蓮さんに、私はプルプルと首を横に振る。
でもだって……蓮さんの口から『恋』という単語を聞くと、まるでイケない言葉を聞いているような気がするんだもの。
「蓮さんっ……」
「ん?」
「私のこと、」
「まぁ、嫌いでもないし、不愉快でもないね。……むしろ妙に、刺激をうけるよ」
妙に刺激って、なんだろう。
「――普通の好きには程遠いみたいですけど……」
「不満?」
それまで穏やかに私の髪をすいていた指先が、顎へと移動しはじめる。