身勝手な恋情【完結】
和明にも、過去の恋人たちにも、こんな気持ちになったことは一度もない。
冷静にならなければと思っていたのもつかの間
火をつけられる――
冷静ではいられなくなる。
蓮さんを目の前にして、浮つく気持ちが自分でも手に取るように分かる。
もう自分で自分が抑えられない。
震える手を伸ばし、彼のシャツに指をかけた。
「――なに?」
顔をあげると、至極冷静な雰囲気で私を見下ろしている彼と目が合う。
きれいな目。
でもただの人形じゃない。その瞳の奥はきらきらと輝いている。
蓮さんらしい、生き生きした眼差しだ。