身勝手な恋情【完結】

――――……



シングルベッドの中から、彼が優雅なさまで煙草に火をつけるのを見ていた。


唇に煙草をくわえた蓮さんはすっと立ち上がるとベッドから離れ、乾燥機から白いシャツを取りだし、さらっと羽織りつつボタンを留める。


やっぱり帰る気なんだ……。


蓮さんは独身だけど、こうもさっさと帰られると、まるで既婚者との道ならぬ恋をしているようで、苦しい。



「――泊まっていきませんか? あの、朝ごはんも作りますし……」



朝まで一緒にいたいって……今までずっと言えなかった。だけど思いを伝えた今日なら言えると思った。


だから勇気を振り絞って、そう言ったのに、

「そのベッド、二人で寝るには狭いね」

と、つれない返事。



< 110 / 469 >

この作品をシェア

pagetop