身勝手な恋情【完結】

「蓮、お久しぶりね」



甘くて優しい声だった。

その声に惹かれるように私もまたほんの少しずつ、ふらふらと二人へと近づいていた。



「――」

「まだ、怒ってるの? どうして何も言ってくれないの? 私、実は蓮がここに来るって聞いて、それで来たのよ?」



自分がどうすれば「美しく」見えるかわかっているに違いない彼女は、ゆっくりと蓮さんの腕に手を乗せ頬を傾ける。

けれど蓮さんは自分に熱っぽく向けられるその視線を受け止めず、反対側の床ばかりを眺めていた。


床をひきずる美しいロングトレーンのブルーのドレス。ゴールドのピアス。

年は二十代半ばくらいだろうか。
女優さんじゃないかと疑うくらいきれいなその人は、この中にいるどの女性よりも美しく目を惹いた。



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