身勝手な恋情【完結】
フルオーダーに違いないグレーのスーツはクラシックなスタイル。三つボタンの真ん中だけを止める三釦中一掛け。
かなりお洒落だし、そのウエストのドレープのラインを見ていると、上等なスーツを着る体型を長年維持しているのがよくわかる。
くせがあるらしい髪はゆるやかに後ろに撫でつけられ、彫りの深い顔立ちは、まるでモノクロ映画の中の、今は絶滅し存在しない貴族のよう。
恐ろしく長いまつ毛は伏し目がちで。けれどその奥にある、透明感のある鳶色の瞳からは老獪な気配は感じず、まるで純粋な少年のような清さも感じる。
若いころはさぞかし、と思うよりも、今、こんなに色気のある男がいるかしら?と思わせられる、自信に満ちた立ち姿。
端整なのに色気がある。
なんて素敵なんだろう……。
ああ、そうだ。
何かに似ていると思ったら、彼の設計と一緒なんだ。
シャープな直線美の中に感じる婀娜っぽさ……。