身勝手な恋情【完結】
「――」
どうして、ここにいるの?
彼から数メートル離れて立ち止まった私を見て、彼は軽く首を傾げる。
「君の元彼が来たよ」
「えっ……!? 和明……? ど、どこにですか???」
「――会社の下で待っていた」
「――」
蓮さんは自分の足元に、目線を向ける。
そこには紙袋が置いてあった。
「なんですか、それ」
「彼の部屋にあった忘れ物、だそうだ」
「――忘れ物……」
どうして?
不思議に思いながら蓮さんのもとへ歩み寄り、紙袋を持ち上げて中身を確認する。
CDだとか、髪留めだとか、取るに足らないものが入っている。
別に返してくれなくてもいいもので……。
「――俺が渡してやると言ったら、帰って行った」
「――」