身勝手な恋情【完結】
「す、すみませんっ……!」
慌ててバッグから鍵を取りだし、彼を部屋の中に招き入れた。
「蓮さん、コーヒー淹れますね! 座って待っていてください!」
そして荷物をリビングに置き、キッチンへと向かおうとすると
「いらないから」
蓮さんが後ろから私の手首をつかむ。
「きゃっ……!」
強い力で引き寄せられてバランスを失った私は、そのまま蓮さんに後ろから抱きしめられる形になった。
そのまま蓮さんは、私の肩に頭を押し付ける。
頬に、蓮さんの髪がふれる。
柔らかそうに見えて、こしがある。蓮さん自身の、いい匂いがする髪……。
だけどその髪すら、恐ろしく冷たくひんやりしていて、やっぱり蓮さん、結構長い時間待っていたんじゃないだろうかと、怖くなった。