身勝手な恋情【完結】
「――人の気持ちなんて、言葉なんて、あてにはならない」
蓮さんはまるで本を朗読するかのように平坦にささやき、私の頬を指の背で撫でる。
「お前がいくら俺を好きだと言っても、明日の保証なんてまるでないんだ」
「蓮さん……」
彼の言いたいこと、伝えたいこと、まだよくわからない。
だけどなんでだろう。
どう考えても、あの小劇場で私を置いて行った蓮さんのほうがひどい。
好きだって言う私を信用してくれない蓮さんのほうに問題がある!って
声を大にして言えると思うのに――
私の中の何かが、蓮さんを傷つけているような気がした。