身勝手な恋情【完結】
それは大きな傷を残すナイフではなくて
じわじわと心臓へと向かっていく細い針のような『何か』
私が蓮さんを苦しめているような気がする……。
だけどそれってなに?
手探りでその曖昧な気持ちの形を確かめるように、私は言葉を続けていた。
「――あの、そもそも和明と別れたのって、彼が自己中とか、そういうんじゃないんです」
「じゃあ、なんで?」
「あの、……私、前の会社でも……わりと大きいところなんですが、そこでも事務、してたんですけど。元々インテリアとか好きで、それで自分なりに勉強してたんです」
「――?」
突然の身の上話に蓮さんが怪訝そうな顔をする。
だけどこのことを話さないと、蓮さんにはわかってもらえない。
膝の腕でぎゅっとこぶしを握って、言葉を続けた。