身勝手な恋情【完結】
「で、社内コンペがあってですね……。家を丸一軒コーディネートみたいな……で、社内の誰でも参加可能って書いてあって……私、図々しくも参加してみたいなって思っちゃって、企画書書いて……」
「で? 男に盗まれた?」
「ま、まさか! 私のデザインに盗む価値なんて、ないですよ!」
暗くならないように無理やり笑顔を作って、首を振った。
なのに蓮さんは私の言葉にさらに深く眉を寄せる。
「彼に内緒でやってたんですけど、それ見つかっちゃって……。で、『お前センスねえな、まさかコンペに出すとか言わないよな?』って、あの、意地悪言われる感じじゃなくて、いつもの彼らしい明るい調子で笑われて……っ」
「――」
「もちろん、自分でもわかってたんです。いくら好きでも、私に才能はないって……! やっぱりデザインってセンスだし……。そもそもやれるって思っていれば、最初から事務じゃなくて、デザイナー目指してたし……! だけど、わたし、やっぱり、笑われたこと忘れられなくて、傷ついて、ばかみたいだけど――やっ、ぱりっ……あれ? あ……やだ、なんでだろ、ごめんなさ、」
誰にも話したことがない、和明との別れの理由。
話したことがないのは、誰にも「そんなことで」と笑われるに違いないとわかっていたからだ。
なのに私は未だに馬鹿みたいに傷ついていて――