身勝手な恋情【完結】
そして大きな手で私の後頭部を撫でて……指に髪をからませる。
緊張して固く強張った私の体を慰めるように、優しく、けれど確固たる意志を持って引き寄せる。
蓮さんの体……熱い。
あったかい……。
涙はまだ止まらなかったけれど、彼のシャツに頬を押しつけられて――
とたんに、ささくれ立った自分の気持ちが、ゆっくりと撫でつけられていくのがわかる。
「よぼう、せん……?」
ゆっくりと、蓮さんに抱きしめられたまま顔を上げる私。
「ああ、そう。予防線」
蓮さんはどこか、何かを吹っ切ったように何度もうなずいたあと
とても遠い目をした。
「ひよこ。俺も、どこかの誰かの、昔話をしようか……」