身勝手な恋情【完結】
そして蓮さんは、私から手を離し、その場に立ち上がる。
「くだらないだろ?」
「蓮さん……」
「本当に、くだらない……いい年こいてさ……疲れていると夢にまで見るんだ。くだらなさすぎて、泣けるよ……」
呆れたような、かすれた声。
優しげなハスキーボイス。
燃えるような熱い初恋を無残な形で散らした蓮さんは、ずっと今まで傷ついていたんだろうか。
未だに悪夢を見るから、夜は一人で眠るんだろうか。
そして一人で暗闇を引きずったまま、朝を迎えるんだろうか……。
「お前を信じてないわけじゃない。だけどもうあんな思いをするくらいなら、死んだほうがマシだから」
そして彼は、私をなんだかわけのわからない表情で見下ろした。