身勝手な恋情【完結】
その日の仕事が終わった後、私は一人、祐さんに社長室に呼び出された。
と言っても、社長室に蓮さんの姿はない。
思い当るところに連絡をしているらしいけれど、まったく所在がわからないらしい。
こうなるともう手の施しようがないとかで、祐さんは未だかつてないくらい暗い顔をして、主のいない社長室の机に手を乗せる。
「――櫻さん。今日来た彼女のことだけど」
「はい……」
「一応、内緒にしておいてね」
「はい、もちろんです。誰にも話しません」
っていうか言えるはずがないよ。
可憐さんが蓮さんの娘だなんて……。
いや、正直信じたくないんだ。
蓮さんと、あの美女の間に生まれたのが可憐さんだなんて、絶対に信じたくない。