身勝手な恋情【完結】
もう二度と蓮さんには会えないんだろうか……なんて考えが頭から離れない。
理性ではわかってる。蓮さんは仕事の鬼だ。だから絶対にこのままいなくなったりしないって。
だけど、まさかそんなはずないと思っていても、どうしても落ち込み気味の私はつまらないことを考えてしまって――
またじわっと目の奥から涙がにじんでくるのがわかった。
やだ、もうっ……!
急いでバッグからハンカチを取り出し、まぶたを押さえていると――
「失礼、電話だ」
突然、立花さんがカウンターを立ち上がり、胸元の携帯を取り出してノアを出て行く。
一瞬彼の視線が私を捉えたように見えたけれど、たぶん、誤魔化せたと思う。
窓の外の雨はやんでいた。
席を立って草介さんにお会計をお願いする。