身勝手な恋情【完結】

蓮さんはあおむけになって手を伸ばし私のあごさきを子猫をあやすように撫でる。



「えっ!?」



そういうつもりではなかったのに、顔がカーッと熱くなる。



「ち、違いますよ、あの、その、風邪ひいちゃったら大変だなって……」

「いいよ。欲張りなひよは、嫌いじゃない……」



私の膝の上の蓮さんが、妖しく目を細める。

大きな手が私の後頭部にまわり、そのまま引き寄せる。


そしてそっと触れ合う、唇。

ドキドキして……息も上手にできなくなる。


優しい蓮さんも新鮮で大好きだけど、こういう蓮さんもやっぱり好き。



「蓮さん、大好き」

「お前にそう言われるの、嫌いじゃないよ」

「じゃあたくさん言います。好きって……」



もう蓮さんのことを不安に思うのはやめよう。

人の心はその人のものだ。

どうにもならないことで迷うのはやめよう……。



今日、この夜。弱虫な私がほんの少しだけ強くなれたような気がした。




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