身勝手な恋情【完結】
「蓮さん、甘いもの好きだから」
「そう、よかった。じゃあ、またね」
「うん。おやすみなさい。草介さん、気を付けてね」
そして草介さんに手を振って別れようとしたところで――
「え……」
足が固まった。
バイクにまたがった草介さんが、異変を感じたのか
「どうしたの?」
と私の視線の先に目を向けたのはわかったのだけれど――
「蓮さん……」
私は呆然とその場に立ち尽くしていた。
だって……道路の向こうの歩道を、蓮さんが歩いていたから。
しかも一人じゃなかった。
彼の隣を歩いているのは――
あの人、知寿さんで。
なんで? どうして?
蓮さんに肩を抱かれた彼女は、ニコニコと上機嫌に微笑みながら、蓮さんを見上げていた。