身勝手な恋情【完結】

「蓮さん、甘いもの好きだから」

「そう、よかった。じゃあ、またね」

「うん。おやすみなさい。草介さん、気を付けてね」



そして草介さんに手を振って別れようとしたところで――

「え……」

足が固まった。



バイクにまたがった草介さんが、異変を感じたのか

「どうしたの?」

と私の視線の先に目を向けたのはわかったのだけれど――



「蓮さん……」



私は呆然とその場に立ち尽くしていた。


だって……道路の向こうの歩道を、蓮さんが歩いていたから。


しかも一人じゃなかった。

彼の隣を歩いているのは――
あの人、知寿さんで。


なんで? どうして?


蓮さんに肩を抱かれた彼女は、ニコニコと上機嫌に微笑みながら、蓮さんを見上げていた。



< 304 / 469 >

この作品をシェア

pagetop