身勝手な恋情【完結】
見間違い?
痛いくらい目を見開いていた私。
ボーッとしたまま、パチパチと、瞬きを繰り返す。
けれど私の前をびゅんびゅんと通り過ぎていく車の向こうには間違いなく
蓮さんの腕にしがみつき、甘えた雰囲気で何かを話しかけている知寿さんと、そしてそんな彼女の体を支えるように肩に腕をまわしている蓮さんがいて。
そう、愛する人を見間違えるはずもなく――
二人は街路樹の明かりに照らされ、それだけで一枚の絵のように見栄えがする。
お……落ち着くのよ、ひよ。
あれだわ。きっと、たまたま――
たまたまで……
知寿さんは今から一人で帰るところ。
だって蓮さんは仕事って言ったし……!
寒さからじゃなく、震えるこぶしを握った。