身勝手な恋情【完結】

「――」

「――」



何を言っているのかはわからないけれど、二人はしっかりと見つめ合いながら言葉を交わしている。


そして突然、蓮さんは知寿さんを支えたままタクシーを止め、まず、彼女を後部座席に押し込んだ。




ドキン……

ドキン……



その様子を見て、心臓が痛いくらい鼓動を早める。



まさか蓮さん、一緒に乗ったりしないよね……

まさか、そんな……



「――ッ……!」



ガツンと後頭部を殴られたような衝撃。


足元がよろめく。

突然地面がが柔らかくなったような気がして、立っていられなかった。


走り去ったタクシーのあった場所にはもう誰もいない。


嘘……

蓮さん、行っちゃったの?

嘘でしょ……?


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