身勝手な恋情【完結】
ふらつく足に力を込め、ふらふらと歩を進めたところで
「危ない!」
後ろから手首をつかまれて、引き寄せられる。あっけなく私の体は歩道へと引き戻されてしまった。
「え……?」
驚いて振り返れば、私の手首をつかんでいるのは草介さん。
彼はものすごく気まずそうな顔をしていて……
それで、ああ、彼もここにいたんだ、見られちゃったんだって気付いて、顔がカーッと熱くなるのがわかった。
「いや、あの、えっと……あれ、私の彼の、はずなんですけど……」
泣いていいのか、笑って誤魔化したらいいのか、わからない。
何も思いつかない。
だから結局私は――
「お、おやすみなさいっ……!」
「あ、ひよさん!」
つかまれていた手首を振り払い、一直線にこの場から逃げ出していた。