身勝手な恋情【完結】
「――」
蓮さんの動きが止まる。
彼を見なくてもわかる。
強い視線と戸惑いを感じる。
どうしよう……わたし――
こんなの初めてだった。
頭が真っ白になって、目の前がグルグルして――
「――ごめん、なさい……たいちょう、悪いの……」
「――」
咄嗟に口から出たのは嘘。
「ごめんなさい……」
蓮さんに背中を向け、パジャマのボタンを震える指で留め、お布団の中にもぐりこんだ。
蓮さんは何も言わない。
私が悪いのはわかっているけれど、彼に何か言ってほしかった。
そして毛布にくるまったまま蓮さんの気配を探っていると、ギシッとベッドがきしむ音がして――
パタン、とドアが閉まる音。