身勝手な恋情【完結】
「きゃっ!」
勢いが強くて、思わず声が出た。
「お前って時々、無自覚に俺を苛立たせるね……」
「……そんな、こと……」
ないと思いたいけど――
「あるんだ」
きっぱりと言い放つ蓮さんは、そう言いながらも、私の顔にかかる髪を指ではらったり、頬を撫でたりしてご機嫌だ。
「――まぁ、そんな駆け引きが出来ないお前だから……」
だから……だから、なに?
蓮さんの次の言葉を期待して、目眩に似た甘い感情が胸に広がる。
けれど結局蓮さんは無言で私を抱きしめて、頬を擦り合わせるくらい近くに顔を寄せるだけで……。
「――起きたらフレンチトースト作ってよ」
可愛いおねだりに、胸がふわっとあったかくなる。