身勝手な恋情【完結】
「ん……」
指で眼鏡を押し上げた後、蓮さんはこっくりうなずいてお皿の上のテリーヌを口に運ぶ。
彼の眼鏡の奥の瞳はどうやら思索に高速回転していて、私がドキドキしてることなんて特に気にしてないっぽい。
もくもくとテリーヌとローストビーフを食べ終えた蓮さんは、そのままくるりと踵を返し社長室へと戻って行ってしまった。
まぁ、とりあえず少し食べてくれたから、いいかなぁ……。
「――櫻さん、あいつに食べさせてくれてありがとう」
「あ、祐さん」
祐さんが私の横に立ち、こっそりと頭を下げる。
「本当に、仕事に夢中になると一切食べなくなるからさ、毎年この時期は体調崩しやすいんだ」
「うちでも毎回食べるわけじゃないんですけど……気を付けます」