身勝手な恋情【完結】
「和美それピンポイントすぎだし。っていうかマズイって、おごってもらってそれはないでしょ」
「ごめんごめん」
クスクスと笑って、そして一気に残りのコーヒーを煽るように飲み干す和美。
空になった缶をゴミ箱に捨てる彼女の後ろ姿に、ふと、中学生のころの自分たちを思い出していた。
「――今は違う? 中学生のころより、ちゃんと恋愛してるって思う?」
「どうだろうね。違う気もするし、何も変わってない気もする。そもそもちゃんとってさ、わかんないよね。中学生のときだってちゃんと好きだったはずだけど……恋して、夢中だったと思うんだけど……だけど今はずっと苦しいよ。傷つくのが怖くて思い切って飛び込めないし、一人でもんもんと悩んじゃったりするし……どうにも後戻りできない感じ。ほんと、苦しい……」
おかしいよね、と自嘲するように笑う和美。
けれど私は笑えなかった。
私も――
大人になったら、もっとカッコいい恋が出来ると思っていたから。
ドラマみたいな……大人の恋を。
けれど十年経ったところで人間がそう変わるものでもなく、相変わらず不器用な恋をして……
悩んで、泣いて、四苦八苦してる。