身勝手な恋情【完結】
ぼんやりと、かすみがかった頭で社長の言葉の意味を考えたけれど
「――いいね?」
頬を指の背で撫でる彼の瞳に魅入られ、私はこっくりと……うなずいていた。
社長はそのまま私から手を離し、無言で背を向け歩きはじめる。
もう声なんかかけられなかった。
だって彼の背中はもううんと遠くにいたから――
こんなこと、間違ってるって
おかしいって、頭の片隅で考えたけど
どうして彼の言葉を否定できるだろう。
まるで魔法にかけられたかのように高槻蓮の言葉に魅入られた私は
引き返せない一歩を踏み出してしまったのかもしれない。