身勝手な恋情【完結】

「ああ、それはそうよ」



否定しません。はい。



「でも、ちゃんとあなたのこと、好きなんだ」

「――そう、かな……」



どうも素直にそうだね、とは言えなくて(不遇の時代が長かったから?)俯いてしまった。


ああ、なんだか恥ずかしい……。
っていうか、本当やっぱり恥ずかしい。


とりあえず自分のことを話題にされるよりも――と、可憐さんに問いかける。



「あの、一緒にいた男の人は? 可憐さんのお友達?」

「え、織音……? ううん。お友達っていうか……ただ、一方的に……追いかけてるっていうか……」

「へぇ……」

「って言うか、織音知らない?」

「知らない」

「うっそー遅れてるね!」

「う……」

「見せてあげる」



そして彼女は、バッグの中から分厚い手帳を取り出し、中をぱらぱらとめくり、数枚の切り抜きを取りだした。


< 378 / 469 >

この作品をシェア

pagetop