身勝手な恋情【完結】
「どうしたの、そんな寒々しい格好で。目立ってるけど」
「あ、あのう……」
そうだよね。悪目立ちするよね。
「そういえば彼と住んでる部屋、この辺だったっけ?」
「――」
うん……
着の身着のまま飛び出してきた感じの私。
あきらかに変ですよね。
でも、喧嘩して戻れない、なんて言えないし。
どう説明したらいいかわからなくて俯いていると
「うちでコーヒー飲んでいく?」
何事もなかったかのようにさらっと言われて、鼻の奥がつんと痛くなった。
ノアの空気
落ち着いたジャズのリズム
あったかいカフェオレ
想像しただけで胸が詰まる。
凹んでいるときの親切は、本当に困る……。