身勝手な恋情【完結】
「でも、だけど……蓮さんのことを思っていたのなら、こんな突然、彼を振り回すようなこと……! 可憐さんのことだって……」
「ああ……。そうでも言わないと会ってくれないもの。蓮」
まったく悪気なさそうに微笑む彼女。
その瞬間――
あの夜、可憐さんが蓮さんに「本当は利用されてるの、わかってる」と言っていたことを思い出して――切なくなった。
可憐さんは自分が蓮さんを呼び出すダシに使われていること、わかってたんだ……。
「最低です。可憐さんのこと……もっと大事にしてあげてください!」
「そうね……。その件に関しては、可憐を振り回してるって思うわ。だけど私には私の人生を楽しむ権利があるでしょう? 可憐だってもう子供じゃないのだし……」
「――」
言葉が出てこない。
人間っていろんな人がいる。
いい人、そうでない人。まったく同じ価値観を持った人なんていないってこと、わかってる。
だけど……
ここまで分かり合えないと思ったのは、本当に久しぶりだった。