身勝手な恋情【完結】
それでも私は言わずにはおられない。
「もっと、可憐さんと話をしてください……」
「話? 言葉なんて何の役にも立たない。私はいくらでもその場の空気を読んで、嘘がつけるもの。可憐だって私のそんな嘘、聞きたくないはずよ。本心を言えば傷つけるだけでしょう。それにね、私だって時々、あの子のことをちゃんと考える『いい母親』の時もあるのよ。でも、そんな気持ちが明日も続くって誰が信じられるの?」
彼女の瞳は、恐ろしいくらい澄んでいた。
その眼差しを見て、そして彼女の言葉を聞いて、唐突に気づいたことがある。
「あなたと蓮さんは似ています……。たとえ血は繋がっていなくても、蓮さんの母親は、確かにあなたかもしれませんね……」
血は繋がっていなくても、二人は精神的に母と子だ。そしてとても危うい関係を――禁忌を侵した。
そしてそれは恐ろしいくらいの純度を保ちながら、蓮さんの人格形成に大きく関与した。
彼女の言葉は、態度は、少年だった蓮さんの心を深くうがち、傷つけた。
そして記憶に深く刻み込まれた。
彼女の望みは叶ったんだ。