身勝手な恋情【完結】
どうしても立ち上がる気に慣れず、ボーッとホテルのラウンジに座っていると、膝の上のバッグの中の携帯が震える感覚。
今度は誰……?
もうこれ以上、私を疲れさせないでほしい……。
ため息をつきつつ、携帯を取りだすと、それは思ってもみなかった人からの着信だった。
――――……
よろよろ帰宅すると、部屋のドアの鍵は開いていた。
ということは、蓮さんがいるってことだ……。
そっとドアノブを回すと
「ひよっ……」
私が中に入ると、少し気まずそうではあったけれど、どこかホッとしたようにソファーから立ち上がった蓮さんが、近づいてくる。
だけど私は何も言えなくて――
近づいてくる彼に背中を向け、コートを脱ぎハンガーにかけると、背後で蓮さんが足を止める気配がした。
私との間合いを測りかけて、立ち止まったような雰囲気がこっちまで伝わってくる。
言わなきゃ……。
「蓮さん、私……実家に帰ります」