身勝手な恋情【完結】
高槻デザインスタジオでの仕事は本当にやりがいがあって、楽しい。
今はまだ雑用しか任せてもらえないけれど、いつか私も社長のように、美しい空間を作りたい――
「――あれ、櫻さん?」
「あっ……! お帰りなさい、祐さん!」
ぼんやりしているとカチャリとドアが開いて、副社長である高槻祐(たかつきたすく)さんが姿を現した。
社長と同じ『高槻』なのは、二人がイトコだから。確か年も同じだったはず。
そして社員はみな私も含め、彼のことを親しみを込めて『祐さん』と呼んでいる。
「うん。まだ残ってたんだね。お疲れ様」
「いえ、もう帰るところですから」
「仕事には慣れた?」
「はい」