身勝手な恋情【完結】
『お前、もう帰ってこないの?』
「――はい」
蓮さんは、なんてことのないように、直球で私の意識を確認してきた。
『――』
私の返事を受けて、電話の向こうはとても静かだった。
それは想定内だったのか
それとも予想外だったのか
わからないけれど、蓮さんはほんの数秒、沈黙していた。
「母の容体が安定するまで、時間がかかりそうなので」
いつまでもそばにいたいって思った。
蓮さんのためならなんでもできると思った。
それは本当の気持ちだった。