身勝手な恋情【完結】
思わず無言になる私。
私がどんだけ悩んだと……。
ちょっと知寿さんを本気で恨みそう……。
だけど知寿さんは知寿さんで、すぐにばれるような嘘をついてまで、蓮さんに会いたかったのかな、と思うと……
いや、好意的に取るのはやめておこう。
あの人はきまぐれな魔女のようなひとだ。
いつだって自分のことしか考えてなくて、自分が蒔いた種がどういう花を咲かせるかなんてお構いなしの人なんだ。
広い世界にはそういう人もいるんだ、くらいにとどめておこう。
(と言っても、蓮さんの義母であることには間違いなく、これから先も何かと関わり合いがあるかもしれないけど)
「だけど……15年ぶりに会った親父は昔よりずっと小さく見えた。どうも体調を崩していたみたいでね。で、しつこく俺に会いたがってたみたいで……だから会ってよかった。これもひよのおかげだ。だけどもっと早くやればよかったって思ったけど」
「蓮さん……」
「俺、本当に臆病だった。だからひよのことをずっと苦しめたと思う」
そして蓮さんは立ち止まり、隣の私を真摯な表情で見下ろした。