身勝手な恋情【完結】
誰も信じない……か。
口止めするでもない。
誤魔化すでもない。
実にあの人らしい口ぶりだ。笑ってしまう。
「だけどさ、社長って本当根性がひねくれまくってるよ……! ひよ、いいの? あんなこと言われて!」
「まぁ、ひねくれてるよね……でも、あれはあれで……」
「なによ、あれはあれでって……! 史上最低の根性悪だよっ!」
和美はビールの入ったグラスを一気に煽り、ドンッとカウンターをこぶしで殴りつけると、私をじいっと見据えて唇をかみしめた。
だけど残念ながら、史上最低の根性悪を、そういうあの人を好きになってしまったのは私だ。
「すみませーん、お代わりください!」
カウンターの奥にからのグラスを持ち上げてみせる。
「もーっ、ひよったらなんで笑えるわけー!?」