身勝手な恋情【完結】
そんなことをつらつらと考えながら、バーへと戻りカウンターの中へ声を掛けた。
「すみません、支払いを――」
バッグから財布を取りだし、カードを抜き取っていると
「俺が払ったから、いいよ」
と、突然スーツ姿の男が私の腕をつかみ、引き寄せる。
え……えええええ!?
その顔を見て、頭を後ろから殴られたような衝撃を受け、ふらふらとカウンターに手をつく。
どうして、なんで?
「かっ……和明……」
絞り出した私の声は弱弱しかったけれど、彼は別れる前と変わらず元気そう。
「よう」
人畜無害風に微笑まれると、なんだか不思議な気持ちになってくる。