身勝手な恋情【完結】

「そうそう、だからさ――」



気が付いたらカウンターの中のスタッフや、ほかのテーブルのお客さんまで巻き込んで、私たちの周囲はちょっと騒々しいくらい盛り上がっていた。


和明はお寺の息子で、檀家のお年寄り相手に鍛えた話術があり、おしゃべり上手で聞き上手な面がある。

だから一緒にいて話題に困ったことは一度もないし、付き合っていたころは、どこにいても話題の中心になる彼のことが誇らしくさえあった。


恥ずかしいけれど彼と自分を重ねて、自分まで人気者になったような気すらしていたっけ…。



だけど今は――どうだろう。

私が今一緒にいたいのは、誰の機嫌も取らないし、空気も読まない、どっちかっていうと無口で意地悪な、蓮さん……。



ああ……蓮さんに会いたいな。



会いたい……



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