身勝手な恋情【完結】
「おつかれさまです……」
中をうかがいながら声をかけたけれど、案の定私たちが普段働いているフロアは薄暗いまま。社長室から薄明りが漏れている。
急に心臓がドキドキし始めて苦しくなったけれど、ここまで来て引き下がるわけにはいかない!
勇気を振り絞って社長室のドアを叩いた。
「あの、お疲れ様です、櫻です! たまたま前を通り過ぎて、その、電気が付いていたものですから、差し入れをと思いまして!」
聞かれたわけでもないのにへたくそな言い訳を口にしながら、背筋を伸ばす私。
蓮さん、いるかな。
それとも祐さんも一緒?