身勝手な恋情【完結】
「ひよ。どうして黙ってる?」
「――」
「ひよ……」
そっと頬を傾けた彼の顔が近づいてくる。
きれいな蓮さん。
いつもと変わらない……無機質できれいな蓮さん。
さっきうなされていた彼はもうどこにもいない。
怖いくらいいつもの彼だ。
だけど――
こんな蓮さんを見ていると、胸がしめつけられる。
違う……
そうじゃない。
意地悪や皮肉ばかりを吐く薄い唇が、私の唇に触れそうになったその瞬間
「――待ってください」
彼にもてあそばれていた手を持ち上げ、とっさに肩に手を置き止めていた。