身勝手な恋情【完結】
出会う前から憧れていた「高槻蓮」
高槻デザインスタジオに入社して、彼の仕事の片鱗に触れるようになってからも、ただ一方的に蓮さんを見ていた。
彼と抱き合うようになってからも、しょせん一方通行で終わるものだと思っていた。
「蓮さんは……私のことどう思ってますか」
「――」
「遊びですか? 今、本気だっていう私のこと、面倒だって思いますか……?」
答えを待って、しん、と静まり返る社長室。
自分の望む答えが返ってくると信じていたわけじゃない。
だけど私が蓮さんに恋をしているこの気持ちは「本物」だ。
痛くて、苦い、本物の恋だ。
「ひよ……」
ほんの数十秒。だけど永遠に近い沈黙の後、蓮さんは私の名前を呼んだ。
「は、はい」