もう一度
「最近顔色あんまりよくないな」

口を開いたのは、海斗

声音は、海斗と黒崎先生、どちらのものだろう

「…そう、ですか」

なんでわかるんだ

それだけ見ていてくれたのか

どっちが今の自分の本心なのか

「秋だからか」

問うてくる海斗の視線は、前方に注がれたままだ

「…こないだ、ちょっと夢見が悪くて」

隠しきれないのは、百も承知

そうか、と頷く海斗の言葉が、二人の間に消えていく

芳川先生の存在が、なんて言えるわけがない

そんな小さなこと気にするなんてらしくない

たった一人の出現で、どうしてこんなに簡単に不安になったりするんだろう

そんなことしか思えない自分が、一番嫌だ

一週間前は、居心地の良かったそこが、今は少しだけ

居てはならない場所のように思えてならなかった
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