もう一度

知らないうちに熟睡していたらしく、海斗に「終わった」と起こされたときには

すでに日は落ちてしまっていた

すっかりと軽くなった体に、少しふらつくような感覚だけが残っている

ロッカールームで独り着替えていると

タイミングがいいのか悪いのか

芳川が入ってくる

この2週間、まともに彼女と話した記憶はない

かわすのはあいさつ程度だろうか

海斗や医局長とはよく話すのを目にするからなんとなく避けられているのだろうな、

と遠目に見ながら思っていた

「お疲れ様です」

小さく頭を下げると芳川の鋭い視線が飛んでくる

「お疲れ様」

ぴりぴりと鎖すような空気が感じられて、早くここから出ようと支度を急ぐ

「立花先生だったかしら」

「はい」

背後から芳川の声がして振り向くが、背中しか見えなかった

「私ね、黒崎君をアメリカに連れて帰りたいと思ってるのよ」