もう一度
「そ、黒崎先生だって芳川先生の腕が立つことくらい認めてる。それをあの人はわかってるの。そしてそれがあの人はうれしかったんでしょう。でも久々に来て見た日本で、黒崎先生が目にかける小娘がいると」

しかも黒崎先生が呼ぶのは、その小娘だけと来た

そりゃ誰だって面白くないわよ

「でも、海斗が日本に収まってる器じゃないってことは、私も思うし」

その足かせになんて、なりたくはない

「まあね、私も黒崎先生ってなんで日本にいるのかなーっては思ったことあるしね」

「なんでかな」

「さあ、本人に聞いてみれば?でも、少なくともいやいや日本にいるとは思えないけどね」

あの黒崎海斗のことだ、見切り位さっさとつけるだろう

「そか」

湯気の立つだし巻き卵は、少ししょっぱい

しるふが無言で箸を運んでいく

もくもくと口に消えていく食べ物に、飯田が追加注文をする

まったく、落ち込んでいても食欲は落ちないらしい

「ねえ、しるふ」

口を開いたのは、飯田

流れた沈黙は、数分だろうか
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