もう一度
「しるふってさ、黒崎先生のどこに惚れた訳」

ずっと聞きたかった質問

飯田から見れば海斗は、腕の立つけれど何を考えているかわからない跡取り息子だ

むろん婚約話も絶えない

この一年半で海斗を訪ねてくるご令嬢やその親を何度か見かけている

その度に海斗と付き合うのは、海斗自身がどうのというよりも

その周辺に苦労させられそうだと思ったものだ

そして現にこうしてしるふは、その隣に立つことに自信を無くしている

まあ、誰もが一度は通る道なのかもしれないけれど

「…どこって、そんなこと突然聞かれても」

飯田の質問に、しるふが困ったように眉を寄せる

これは困っているというより照れている、と判断した飯田は

「しるふって黒崎先生のことになるととんと子供なんだもん、困ったもんだわ」

しるふ用に新しいビールを追加する

「子供じゃないわ」

「子供よ、子供」

こんな大きな子供なんていてもらっちゃ困るんだけど

「小さいことですぐにすねるしさ、いざなだめようとすると放っておいてほしいとか言うし、じゃあ放っておこうかとすると構ってくれないってもっとすねるし」

どうしろっていうのかしらね
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