もう一度
「はいはい」

面倒くさそうに後ろ手をついた飯田の前では、むっすりと頬を膨らませるしるふがいる

飯田の判断、これは酔っている

「さっきの質問、黒崎先生のどこに惚れた訳」

昨日の今日、あまり飲ませるべきではなかっただろうか

「んー、海斗はさあ、」

わっかりにくいんだよね

細められた瞳は、不機嫌そうにも見える

「わっかりにくいのよ、本当。もっと端折らないで言葉にしてって感じ。鬼だし、無愛想だし、腕いいし、背高いし、体脂肪率3%だし」

最後の二つは関係ないんじゃないだろうか

頬杖を突いたしるふの瞳がさらに細くなる

「でもさ、時々…でもないかなあ、優しんだよね。上辺だけじゃなくて優しいの」

自分でも見落としがちな自分を、彼はきちんと見ていてくれる

それが、うれしくて

気がついたら落ちていた

「でもね、だからこそ自信がないんだよね」

なぜ彼が自分を選んだかが分からない

何が彼女たちより秀でていたのか

それが知りたくて、でも知るのがすごく怖い
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