もう一度
「黒崎病院ERに来て黒崎と聞いても顔色一つ変えない女なんてそうそういないだろう」

それにそういう女の方が面白い

「変わり者ですね、黒崎先生」

言葉とは裏腹に飯田の口元には笑みがある

「自覚してる」

最近なんでこれに落ちたんだろうと自問する回数が増えている

うんざりとため息をつく海斗に飯田が笑う

「同情かつ応援しますよ、心から」

きっと彼は、ぶれたりなんてしないだろうから

そうじゃなきゃ困る

「私、しるふのことを手におえるのは黒崎先生だけだと最近思い始めたんですよ」

「じゃじゃ馬の調教師になんてなりなくないがな」

ああ、でももうなってるか

ぼそりとつぶやいた海斗の言葉に飯田が、快活に笑う

幸せそうに眠りこけるしるふを、今ここでたたき起こしたいと思ったのは、

一瞬の気の迷いだと思いたい
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