もう一度
「あのさ、海斗」

少し沈黙が流れた後、しるふが意を決したように口を開く

視線だけで応じる気配がするが、見つめるのは、目の前のグラス

手は、膝の上が一番しっくりくる

「海斗がさ、アメリカ行きたいなら行っていいよ」

私に構わないで行っておいでよ

「アメリカ?」

なんで

そうたずねてくる海斗が飲むのは、一番弱い酒

「いや、海斗が私のことを気にかけてアメリカに行かないのかな、って思って。それは嫌だからさ」

だから海斗が行きたいと思っているのなら

ぜひ貴重な経験を積んできてもらいたい

「なんだ、急に」

らしくないというか、どうしてこんなにしおらしいのか

「芳川さんが、アメリカでオペのチームを結成するって。そこに海斗も加わってほしいって言ってたから」

ああ、あれね

ころころと丸い氷がグラスの中で回る

「断った」

「ええ!?」

なんで!!
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