もう一度
「いや、黒崎先生は、私の指導医だから、だから日本にいるのかなって」

もし海斗がそのせいで行きたい道にすすめなくなっているのならいやだと思ったから

「んなわけあるか。黒崎病院から離れないのは、しるふのためじゃない」

俺自身のためだ

そう言い放った海斗が、グラスに手を付ける

「海斗のため?」

向けられたブラウンの瞳に、それ以上詮索するな、と強めに頭を撫でる

「それが話?」

「ん、うん。あとは、その、」

ここまで来たら勢いだ

海斗に乱された髪を直しながら

「海斗と芳川先生って、その、どんな関係だったのかなって」

見つめる先には、少し水滴のついたグラス

「芳川?アメリカで研修してた時の同期だけど」

それ以上でもそれ以下でもない

「それだけ?誓ってそれ以上じゃないって言える?」

視線を上げると海斗の漆黒の瞳が、瞬いている

「誓うも何も、だからただの同期」

「本当に?」

「本当」

「……そう」

外されることのない漆黒の瞳に、しぶしぶ頷く
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