もう一度
「芳川先生の方が医者として技術あるし、二年目の私より芳川先生が近くにいた方が張り合いがあるだそうし」

それに、芳川先生美人だし

だんだんと小さくなっていく声

「どうして私だったかなんてまったく見当つかないんだもん」

「だから、しるふが、しるふだから」

そう言うとしるふの瞳が真っ直ぐに見上げてくる

逆らえたことなんて、今思い返せば出逢ってから一度だってない瞳が

「覚えとけよ、しるふ」

視線ひとつで自分を折れさせることができるのなんて、彼女以外いやしない

とはいえ、素直に答えてやるのも杓で

「しるふは、なんで黒崎病院に来ようと思った」

「え、なんでって、医局長に誘われたから」

あと隣町だから姉がとやかく言わないと思ったから

「じゃあ、指導医が俺になってどう思った」

「頭にきた」

本当に、この姫君をどうしてやろうか

「だって海斗全然優しくないしさ、てか鬼?現代の。のくせに腕は立つし、言ってること正論だし、そりゃ腹立ちますとも」

しかも気がついたら落とされていた、なんて
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