もう一度
「そういうところなんだけど、なんて言ってもわかんないんだよな」

ぼそりとつぶやいた独り言

これを言葉で説明しようなんて野暮すぎる

「黒崎病院の跡取り、そう知ってどう思った」

椅子の背もたれに寄りかかりながら海斗が漆黒の瞳を向けてくる

「え、ああ、そうなんだ、かな。そう言えば黒崎だ、みたいな?」

我ながらこれは天然回答だと今でも思う

「そういうところ」

空中を泳がせていた視線を戻すと海斗の真っ直ぐな瞳に捕えられる

「まさか最初に黒崎だって言った時にスルーされるとは思わなかったけど」

あれは軽く衝撃だった

でも、今思えばあの衝撃ですでに始まっていたのかもしれない

「でも、だからこそしるふを指導しても良いと思った」

きっとしるふは、自分のいる世界とはまた別の世界を見ているから

どうせならそのまま白い世界を見続けてほしい

もう、自分は何も知らなかった頃になど戻れはしないから

「どこに行ったって黒崎病院跡取りはついて回る。それはもう諦めてる。けど、だからこそしるふは他と違う」

諦めの中で見つけたたった一つの花
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