もう一度

「しるふってホント、」

「ごめん。仕事中だった。今の忘れて」

気分を変えるように手を叩いたしるふに、小さく頷く

「ま、芳川先生思った以上に出来るしねー」

指示は的確で迅速

落ち着きがあってどれだけの修羅場を経験して来たか容易に想像がつく

「ちゃっかり弾丸処理もお手の物とか言うんだろうなー」

うんざりとしたように飯田がつぶやく

「あ、弾丸処理なら黒崎先生もやったことあるってよ」

アメリカで3回、日本で一回

「ええ!?黒崎先生も!?何者あの人!?」

つか、なんで知ってるのよそんなこと

少なくともここ一年半は、そんな機会に出逢ってはいないはずだ

「ああ、去年やり方だけでもいいから覚えておけって教えてもらったんだ。知識だけなんだけどね」

その知識を使う時が来ないことを切に願っている

「さすが、黒崎先生のお気に入り」

手のかけ方が違うわ

感心したように飯田の口からため息が漏れる

苦笑するしるふの耳に

「立花」

歯切れのいい海斗の声が届く

「はい…!」